にしのあきひろエンヤコラ日記〜絵本作りはつらいよ〜

 僕の絵本は筆先0.03ミリのペン一本で描いておるわけですが、さすがにこの細さですから、一ページ仕上げるだけでも相当な時間がかかってしまいます。はたして何故に0.03ミリというバカげたペンを手に取ってしまったのでしょうか? もちろん理由があります。
「仕事がなけりゃ時間がある。金がなけりゃ覚悟がある。美貌がなけりゃ笑いがある。とにかくアタシにゃ、何かある」
 ハゲ、チビ、デブ、ブサイク、貧乏……そこに埋もれているアドバンテージを掘り起こしてフル活用するのは、河原乞食と呼ばれて久しいお笑い芸人のお家芸。
 絵本を描こうと決めたときに、まず最初に考えたのは「絵本作家さんには真っ向勝負を挑まない」ということでした。
 絵はヘタクソですし、出版のノウハウも知りません。なので「勝っている部分」を探すことにしました。そこで出た答えは「時間」です。
 自分は絵本作りを生業としている人間ではないということ。つまりは、一冊の絵本を作るのに10年かけることも可能なわけです。これが本職だと、さすがに難しいでしょう。
 この部分にムフフのフとつけ込んで、「だったら、あえて時間がかかるやつを作ろう」と汚い反則技に出たわけです。
 東急ハンズの画材売り場に行き、もっとも細い0.03ミリのペンを購入します。描きあげるまでに、より時間をかけるためです。間違っても制作時間が短縮できそうな画材は使いません。短時間で完成してしまう作品だと僕がやるメリットを殺すことになるからです。
 0.03ミリのペンで絵本を作っている理由は「時間をかけるため」だったのです。
 そうして、「まるまる1年かけてやる」と開始した絵本制作ですが、そう簡単にはいきませんでした。おおいなる計算ミス(そもそも何を根拠に“1年”としたのか?)。制作開始から1年後に、4分の1もできていなかったのでした。

にしのあきひろ エンヤコラ日記〜絵本作りはつらいよ〜 #3 子供たちに伝えたいこと

 しかしながら、ここまできて引き返すわけにもいきません。なにより、その頃には「0.03ミリのペン一本で最後までやり遂げたら、『西野くん、なんだかストイックでステキぃ〜』とチヤホヤされるのではなかろうか?」というドスケベ邪念が育ちに育っておりましたので、そこで考えを改めることは、僕が許しても、僕の下半身の旦那が断じて許しません。つらい板挟みの時期でした。
 泣く泣く0.03ミリのペンを一本握りしめ、けな気にゴールへとひた走ります。
 とは言うものの、実は(ここだけの話)、場所によっては別のメーカーさんの0.05ミリのペンを使っていたりもします。
 しかしそこは「0.03ミリのペン一本で描いた」という触れ込みの方がどう考えたってカッチョイイので、いとも簡単に嘘をつきます。
 子供たちよ、これが大人なのだよ。

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エンヤコラ日記〜絵本作りはつらいよ〜

にしのあきひろ

西野亮廣。1980年7月3日兵庫県生まれ。99年梶原雄太と漫才コンビ「キングコング」を結成。「NHK上方漫才コンテスト」で最優秀賞など受賞多数。現在「はねるのトびら」「キングコングのあるコトないコト」「いつも!ガリゲル」などのレギュラー番組で活躍する一方、漫才ライブ「KING KONG LIVE」やソロトークライブ「西野独演会」などの活動も意欲的に行っている。「日の出アパートの青春」「ドーナツ博士とGO!GO!ピクニック」「グッド・コマーシャル!!」(のちに、小説『グッド・コマーシャル』として刊行)、「ペンギン・ボーイズ」ほか、演劇やショートムービーの脚本・演出も。

絵本『Dr. インクの星空キネマ』では、物語の絵の力で世間を驚愕させた。絵本第二弾は、切ないラブストーリー、『Zip&Candy ロボットたちのクリスマス』。今回、三作目の絵本に取り組んでいる。

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