にしのあきひろエンヤコラ日記〜絵本作りはつらいよ〜

 小学1年生、「カトちゃんケンちゃんごきげんテレビ」を見た僕は、お二人の立振る舞いに「大人でも遊んでよかったのか!」と衝撃を受けました。それ以来、ステキ大人の定義は「許されちゃう人」となり、あの日のカトちゃんケンちゃんに習い、「いかに遊んで暮らせるか」という大切なテーマのもと、人生の舵を切る今日でございます。
 しかしながら、「完成までに数年かかる」というド根性ヨロシクの汗臭い絵本制作のどこに“遊び"があるというのでしょうか? 遅々として進まない作画には確実に視力を奪われ、ストーリー作りは抜け毛を促進、ジジイ街道まっしぐら、自然と涙が流れます。
このままでは自分が掲げた「いかに遊んで暮らせるか」というテーマを裏切ることになってしまいます。曲がったことが大嫌いな僕は、正義の名のもと、汗臭い絵本制作の中であろうと、遊ぶ方法を真剣に模索します。
 そこで見つけたのがロケーション・ハンティング、いわゆる「ロケハン」です。
 絵本制作に必要な写真や情報の収集の為に、物語の舞台となる場所を訪れる必殺技です。
 プライベート旅行の為にスケジュールを調整するとなると、「何を遊んでるんだ西野」と番組スタッフから氷のような視線を向けられるところですが、都合の良いコトに“描きたい場所が行きたい場所“である僕は、ただ単純な旅行を「絵本のロケハン」と称し、「仕事でしぶしぶ」感を演出することによってスタッフの目をかいくぐる方法を思いついたのです。

にしのあきひろ エンヤコラ日記〜絵本作りはつらいよ〜 #5 許される男 Photo. A

 前作「Zip&Candy」では、念願だったベネチアへ行き、「チャオ!チャオ!」と言いながらビール片手に町を練り歩きました。途中、気になった箇所でカメラのシャッターをパシャリ。帰国後、この写真に手を加えて、こんな感じ。

にしのあきひろ エンヤコラ日記〜絵本作りはつらいよ〜 #5 許される男 Photo. B

 ここまで写真の構図そのままに描いたのも珍しいです。右の壁からゾウさんが飛び出しているのは、僕が覚醒剤常習犯でもなく、いかがわしい宗教に洗脳されているわけでもなく、ただ単純に、YouTubeで観たサーカスのゾウさんの映像がカッチョブーすぎて、それ感化されたからです。

にしのあきひろ エンヤコラ日記〜絵本作りはつらいよ〜 #5 許される男 Photo. C

 現在制作している絵本の舞台は森。描きたかったのは「南国の森」です。前述のとおり、描きたい南国の森は僕が行きたい場所でもあるわけです。
 フラッと行ける森を探し、番組スタッフには「ロケハン」と称して、僕は沖縄・西表島へ飛びました。それが、まあ素敵な島だこと。
 首からカメラをぶら下げて森を歩いたりもしましたが、ほとんどの時間はオリオンビールに溺れ、三線の音に身を委ねてデレデレニヤニヤと顔面を溶かすもナンクルナイサー。「ロケハン」とは名ばかりの、バカンスでございます。
「西野、テメエ腐っているな」と思うなかれ、上には上がおります。

にしのあきひろ エンヤコラ日記〜絵本作りはつらいよ〜 #5 許される男 Photo. D

 写真に写っているハナタレ小僧のような男は、僕の呑み仲間であり、僕以上の汚い手口で仕事から逃げてきた幻冬舎の専務。東京であくせく働く幻冬舎社員への口実は「西野先生のロケハンのサポート」。
「サポート」なんてとんでもない。「楽しー!」と叫びながら、僕のずっとずっと前を歩いておりました。だけど皆はこの男を許します。
  大人はこうでなくっちゃね。
 僕の絵本作りには欠かせない大切な男です。

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エンヤコラ日記〜絵本作りはつらいよ〜

にしのあきひろ

西野亮廣。1980年7月3日兵庫県生まれ。99年梶原雄太と漫才コンビ「キングコング」を結成。「NHK上方漫才コンテスト」で最優秀賞など受賞多数。現在「はねるのトびら」「キングコングのあるコトないコト」「いつも!ガリゲル」などのレギュラー番組で活躍する一方、漫才ライブ「KING KONG LIVE」やソロトークライブ「西野独演会」などの活動も意欲的に行っている。「日の出アパートの青春」「ドーナツ博士とGO!GO!ピクニック」「グッド・コマーシャル!!」(のちに、小説『グッド・コマーシャル』として刊行)、「ペンギン・ボーイズ」ほか、演劇やショートムービーの脚本・演出も。

絵本『Dr. インクの星空キネマ』では、物語の絵の力で世間を驚愕させた。絵本第二弾は、切ないラブストーリー、『Zip&Candy ロボットたちのクリスマス』。今回、三作目の絵本に取り組んでいる。

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