にしのあきひろエンヤコラ日記〜絵本作りはつらいよ〜

 我らが吉本興業は映画事業にもずいぶん力を入れているので、僕ごときでも「映画は撮らないの?」と訊かれることがしばしば。返事は決まっています。そもそも撮る技術も才能もありませんし、もしもあったとしても、撮りません(今のところはネ)。
 メガホンをとられた先輩方の話を伺うと、必ず話題に上がってくるのが「予算」の問題。限られた予算の中では、泣く泣く妥協しなければならない部分も出てくるのだそうな。
 そうなってくると予算をたくさんかけられるハリウッド映画の方が実現可能な選択肢がそれだけ増えるわけですから、「ハリウッドの方が有利じゃ〜ん」と僕なんかは考えてしまうのですが、短慮というものでしょうか。…ううむ。

 映画の結論はさておき、この点、絵本はどうでしょう? 実のところ、絵本というのはかなりムフフのフ的状況。壮大な舞台セット費も必要としませんし、理想の出演者はギャラを気にせずにブッキングすることができます。製作費を気にすることがありません。これこそが絵本というメディアの特性であり強みだと僕は考えております。

にしのあきひろ エンヤコラ日記〜絵本作りはつらいよ〜 #8 お金のこと Photo. A

「絵本なんだから製作費がタダであたりまえじゃないか。取り立てて言うほどのことでも…」とお思いの方もいらっしゃるでしょう。いやいや、ちょいと聞いとくれよ旦那さん。僕はココがとても重要なポイントだと思っております。

「製作費がタダ」ということは、つまり、“無限のお金を手渡された”という状態です。その状態で「この無限のお金を使って何か驚くようなモノを作って」と頼まれたとして、たとえば700円で仕上げてしまったら、「もったいない」という気持ちにならないでしょうか? 僕は、なります。そういうモノは「1000円以内で作って」という依頼の時に作ればいいと思うからです。
 どうせだったら、何億、何兆と使ってやろうと。それこそが「製作費タダ」のメリット、すなわち絵本の特性を活かすやり方ではないでしょうか。「絵本は制作費がタダなんだから、天文学的な製作費がかかる世界を作っちゃうわん」となったわけです。

 こんなことを言うと少し角が立つかもしれませんが、「絵本を通して子供たちの感性を豊かにしていきたい」といった俗世間に溢れているご立派な大義名分にはさほど興味はなく、どちらかといえば、「絵本だったら、アタイのような貧乏人でもハリウッド映画と戦えるじゃん!」という、そこに可能性を感じて筆を走らせておるわけです。
 タモリさんと酔っ払ったノリで後先考えずにスタートさせた絵本作りですが、絵本というものが結果的に、頭の中にある物語のアウトプットの方法としては(現在の自分が置かれている状況では)最適であったのです。超ラッキーちゃんです。

 ところがどっこい。それには当然、「一人作業」という対価を支払わなければなりません。基本的に皆からチヤホヤされたくてたまらない“かまってちゃん”にとって、これはとても辛い選択でございます。同時に集団心理の強みのようなものもなく、「はたして自分の選択は正しかったのだろうか?」という不安に駆られることもしばしば。
 そうそう甘い話はないようです。これも浮世のしがらみというやつでしょうか。

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エンヤコラ日記〜絵本作りはつらいよ〜

にしのあきひろ

西野亮廣。1980年7月3日兵庫県生まれ。99年梶原雄太と漫才コンビ「キングコング」を結成。「NHK上方漫才コンテスト」で最優秀賞など受賞多数。現在「はねるのトびら」「キングコングのあるコトないコト」「いつも!ガリゲル」などのレギュラー番組で活躍する一方、漫才ライブ「KING KONG LIVE」やソロトークライブ「西野独演会」などの活動も意欲的に行っている。「日の出アパートの青春」「ドーナツ博士とGO!GO!ピクニック」「グッド・コマーシャル!!」(のちに、小説『グッド・コマーシャル』として刊行)、「ペンギン・ボーイズ」ほか、演劇やショートムービーの脚本・演出も。

絵本『Dr. インクの星空キネマ』では、物語の絵の力で世間を驚愕させた。絵本第二弾は、切ないラブストーリー、『Zip&Candy ロボットたちのクリスマス』。今回、三作目の絵本に取り組んでいる。

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