にしのあきひろエンヤコラ日記〜絵本作りはつらいよ〜

 こうして「エンヤコラ日記」を書いている裏で、絵本作りはノラリクラリと進んでおり、実は残り2ページというところまできております。
 ラストのページには文章を入れず、一枚の絵でビシッと終わらせようかしら?と考えているのですが、「そもそも絵で物語を閉める判断は正しいのか?
 という思いも少しあります。ストーリーだけで言えば、その前のページで終わっております。
 予定しているラストのページが必要ないのであれば作画制作は、現在描いている絵を仕上げたら終了となるわけですが、ここで自問自答します。
「そもそも絵で物語を閉める判断は正しいのか?」という思いは、純粋に作品を良くするための判断か否か。ともすれば、「少しでも早く終わらせたい」と楽を正当化させるために生まれた屁理屈の可能性があります(僕の場合は多分に)。実は絵本制作、この“引き際“が非常にやっかいなのです。

にしのあきひろ エンヤコラ日記〜絵本作りはつらいよ〜 #13 サービス過多に御用心 Photo. A

 たとえば、このページ。完成と言ってしまえば完成ですが、まだ描こうと思えば10時間でも20時間でも描けます。作画には「42.195km走りきった」といったような明確なゴールがないのです。
 自分の判断でゴールラインを引かねばなりません。「あとチョットだけ描いて終わろう」と軽いサービス精神で筆を入れたら最後、「やっぱり、さっき終わっていれば良かった」と追求心が仇となるケースもあります。

 先日、女忍者“くの一"を扱った作品、いわゆる「コスプレもの」のエッチビデオを観ました。
 その冒頭シーン、長い白髭をたくわえた師匠が「この試練によくぞ耐えた。その鍛えぬかれた汝の肉体を私にとくと見せよ」と言い放ちます。“くの一"は「はい。師匠!」と疑うことなく着物を脱ぎ、一糸まとわぬ姿になるのですが、笑止千万。
 服を脱いだら近頃流行りの女の子。開始5分で、もはや“くの一"ではありません。
 サービスが過ぎたばっかりに、結果的にコスプレファンの気持ちを踏みにじることとなってしまいました。僕は怒りを覚えながら、「チクショウ」と股間をさすり続けたのでした。

にしのあきひろ エンヤコラ日記〜絵本作りはつらいよ〜 #13 サービス過多に御用心 Photo. B

 明確なゴールのないモノだからこそ、スピードや道順には慎重を期さねばなりません。目的はサービスに酔うことでなく、努力やアイデアをひけらかすことでもなく、「素晴らしい作品にすること」です。
 絵本作りは、いよいよその“引き際"に差し掛かってきました。

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エンヤコラ日記〜絵本作りはつらいよ〜

にしのあきひろ

西野亮廣。1980年7月3日兵庫県生まれ。99年梶原雄太と漫才コンビ「キングコング」を結成。「NHK上方漫才コンテスト」で最優秀賞など受賞多数。現在「はねるのトびら」「キングコングのあるコトないコト」「いつも!ガリゲル」などのレギュラー番組で活躍する一方、漫才ライブ「KING KONG LIVE」やソロトークライブ「西野独演会」などの活動も意欲的に行っている。「日の出アパートの青春」「ドーナツ博士とGO!GO!ピクニック」「グッド・コマーシャル!!」(のちに、小説『グッド・コマーシャル』として刊行)、「ペンギン・ボーイズ」ほか、演劇やショートムービーの脚本・演出も。

絵本『Dr. インクの星空キネマ』では、物語の絵の力で世間を驚愕させた。絵本第二弾は、切ないラブストーリー、『Zip&Candy ロボットたちのクリスマス』。今回、三作目の絵本に取り組んでいる。

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