桂望実『ハタラクオトメ』

Webマガジン幻冬舎: 特別著者インタビュー
『ハタラクオトメ』

桂望実氏インタビュー

デビュー以来、着実に作品を発表し続けている桂望実さん。
OLたちの奮闘を描いた今作は、
ビジネス誌「日経ビジネス Associe」で連載されたものでした。
女性読者から「わかる、わかる!」との
共感をいただいている『ハタラクオトメ』。
その刊行を記念して、桂さんにお話を伺ってきました。

桂望実氏プロフィール:1965年東京都生まれ。大妻女子大学卒業。会社員、フリーライターを経て、2003年、「死日記」でエクスナレッジ社「作家への道!」優秀賞を受賞しデビュー。2005年、『県庁の星』が映画化され大ベストセラーとなる。主な著作に『ボーイズ・ビー』『Lady,GO』『平等ゲーム』(いずれも幻冬舎)、『Run!Run!Run!』(文藝春秋)、『明日この手を放しても』(新潮社)、『もしも、あと少し、幸せになれるとしたら。』(朝日新聞社)、『嫌な女』(光文社)がある。

ごっつぁんのキャラクターを考えていたら、
思いのほか「いい子」になってしまって。
それが執筆時に色々と私を悩ませました(笑)

Q:『ハタラクオトメ』は、桂さんにとって初めてのビジネス誌での連載でした。何か意識したことはありますか?

──編集者に「どういう作品がいいのか」と聞いたら「何でもいいです」とのことだったので、「さてどうしよう」と(笑)。でも、「日経ビジネス Associe」さんは読者層がはっきりした雑誌だったので、その方たちに喜んでもらえる作品にしようとは思いました。

Q:どういう方たちが「日経ビジネス Associe」を読んでいるのか、すごい知りたがっていましたよね。

──そうですね。読者のことは意識しましたね。「日経ビジネス Associe」さんの読者は製造業の方が多いと聞いたので、そういうところから少しずつ作品の構想を練っていきました。私自身、製造業の会社で働いた経験もあったので、それを生かせるかな、とも思いましたし。製造業の会社で働く女の子を主人公にしてみようかな、と。

Q:女性が主人公っていうのは最初から決まっていたんですか?

──そうですね。なんでだろ? 男性が主人公ということは考えもしなかったですね(笑)。私自身が女性の複雑な内面を描きたいモードだったのかもしれないです。やっぱり、女の人って何かと苦労しているじゃないですか。だから書くのが難しいんですけど、今回の作品では女性を主人公にしようっていうのは決めていました。

Q:その主人公(ごっつぁん)ですが、作品のプロットを見せてもらった際に、「157cm、100kg」と書いてあってびっくりしてしまったんですが(笑)。

──愛されるおデブちゃんを描きたかったんです(笑)。もしかしたら欠点に思われるかもしれない何かを逆に強みにして生きている女性を。でも、ごっつぁんのキャラクターを考えていたら、思いのほか「いい子」になってしまって。それが執筆時に色々と私を悩ませました(笑)。

Q:悩ませたと言いますと?

──やっぱりね、ひねくれている人物のほうが書きやすいは書きやすいんですよ。「いい子」を魅力的に動かしていくのって、想像以上に大変なんです。ひねくれた人のひねくれた反応って、そこを起点に物語を膨らませやすいんですけど、「いい子」の場合はそういう技が使えない(笑)。それと、ごっつぁんは愛されキャラなので人が集まってきてしまって、書くのが大変でした。

Q:作品の舞台が会社だからというのもあるでしょうけど、桂さんの作品の中では登場人物の数が一番多かったかもしれないですね。その中にはもちろん男性もいて、女性読者から「こういうヤツ、会社にいる!」みたいな共感を呼んでいるわけですが(笑)。

──それはやっぱり、自分自身のOL経験のおかげですね。会社で働いていると、「この会議って何のためにあるの?」とか「そこ、そんなに大事なの?」って疑問に思うことってあるじゃないですか。特に男性って不思議で不思議で。女性から見た意見なので反論もあるかもしれないですけど、「自分の上役を見ながら仕事をしている」って感じがしちゃって。私自身のそういった印象は登場人物にも反映されているかもしれないですね。

Q:「かもしれない」どころか、きっちり反映されていると思いますよ(笑)。男性が読むには、ちょっと怖い作品でもあるような気がしますし。

──でも、男性を悪く書こうなんて意識は全然なくて、どの登場人物にも愛を注いだんですよ(笑)。

Q:確かにどの登場人物も嫌いにはなれないんですよね。ところで、桂さんって、作品を執筆するにあたって、かなりの時間を推敲作業に当てますよね。

──書くのと同じくらいの時間を推敲に当てていますね。一回書き上がった時って、私の感覚としては「折り返し地点」なんです。書いた作品を出力して、そこから延々と推敲作業。書き込んだり削ったりシーンを入れ替えたりの作業を繰り返すのですが、だいたい一つの作品で、赤ペンを10本くらい使いますね。

Q:10本もですか!

──『ハタラクオトメ』は20回くらい推敲したと思うんですけど、毎回違うテーマで推敲するんですよ。「活字を読んでその場面が絵として浮かぶか」とか「心理描写の流れに不自然さはないか」とか「誰のセリフかわかるか」とか。あと、「同じシーンで泣けるか」とか。

Q:そうやって仕上がった作品が、最終的にはデザインされて書店に並ぶわけですが、今回の装幀はいかがでしたか?

──いつも、編集者に装幀のイメージを聞かれるんですけど、言っても採用されたことがないんですよ(笑)。でも今回は「人形」というアイデアが採用されたので嬉しかったです。とはいえ、こんなにかわいい人形を作ってもらえて、こんなに躍動感のあるビジュアルにしてもらえるとは思っていなかったので、ラフを見せてもらったときはびっくりしてしまいましたね。「プロがやるとこんな風になるんだ」って。

Q:書店でも目立っていますよ、『ハタラクオトメ』は。最後に、読者の方へのメッセージをお願いします。

──『ハタラクオトメ』は、男社会の象徴である「会社」というところで、ごっつぁん率いる6人の女の子たちが色々な壁にぶつかりながら成長していく物語です。地震と原発で不安な日々が続いていますが、そんな中で読んでくださった方が少しでも爽快感を感じてくれたら嬉しいなと思いますし、そういう作品に仕上がったとも思っています。女性が主人公の作品ですが、男性の方にも読んでいただけたら嬉しく思いますので、よろしくお願いいたします。

Q:ありがとうございました!