お品書き



さわやかなミュージカル『サウンド・オブ・ミュージック』と、全然さわやかじゃない「苦手な言葉」について、イラストを書きました。
両極端のトーンを味わっていただければ幸いです。

 劇団四季さんのミュージカル『サウンド・オブ・ミュージック』を観劇しました。「エーデルワイス」、「ドレミの歌」、「もうすぐ十七歳」、「ひとりぼっちの羊飼い」…ほか、有名な曲が満載で、ミュージカルを見ながら(ああ、音楽の授業でリコーダーで吹いた曲だ!)と、俳優さんの歌声とともに頭の中にメロディーが蘇る感覚が新鮮でした。中でも「蘇り度」が大きかったのは、名曲「私のお気に入り」。オーストリアが舞台のミュージカルなのに、バックにうっすら金閣寺が見えたほどです。
 厳格なお父さんこと「トラップ大佐」の歌声も印象的でした。前妻をなくしたショックから家庭内での音楽を禁止していたのにも関わらず、子供たちがマリア先生と歌う姿を目撃すると、たまらず飛び入り参加して「♪エ〜デルワァァーーーーイス!!!!!」…うますぎ。「オレ、音楽やめたから」と宣言して、こちらを油断させておいた上での、この「美声&現役バリバリ感」はどうでしょう?「わたし、全然勉強してきてないよー」と言いながら、テストで100点を取るかつてのクラスメートを思い出し、少々複雑な心境になりました。でも、カッコいいからいいのです。もちろん、主役のマリア先生もステキでした。登場時からとにかく「明るい人」なのですが、物語中盤でオーストリアの社会情勢が不安定になってからも依然「明るい」まま。そうか、子供たちは大人の顔色を読み取るから、何があっても年長者は『ヨーロレイルヒー♪』スタイルをキープせねばならないのね…! と、大変勉強になりました。イヤなことがあったら「まず歌う」。“大人のメンタル強化”という面から見ても、非常に学ぶところの多い、おすすめの舞台だと思いました。

サウンド・オブ・ミュージック作品紹介|劇団四季
http://www.shiki.gr.jp/applause/sound/

社説

Webマガジン幻冬舎: 豊村真理 蛇いちご新聞 第34回

スイーツ問題

スイーツ問題

 スイーツが嫌いだ。いや別に、甘いものは食べられるが、とにかくこの呼び名になじめない。「sweets」。そんなスイートな単語、口が裂けても発したくねぇ。「菓子」「甘味」「嗜好品」。古来、日本には便利な言葉があったはずだ。果物に到っては「水菓子」。実に美しい。百歩譲って「デザート」までは許そう。しかし「スイーツ」はいけない。なんだろう…この単語から、西洋社会に媚を売るような、アメリカのものは何でもいいよね!的な、そこはかとない「ギブ・ミー・チョコレート感」を感じてしまうのは、私だけだろうか。さらに許せないのは近年、和菓子までもがその傘下に入り始めていること。大福1個を称して「和スイーツ」。複数形というのも(いいんだろうけど)いただけない。

「キモい」も、許せない言葉だ。ご存知の通り「気持ち悪い」を略して「キモい」だが、ならば「気持ち良い」を略しても「キモい」になるわけで。本来であれば「キモーい」と口にしただけでは、どちらの「キモい」を指しているのか分からないというのが文法だ。(しかし「キモい」という言葉の語感自体が「キモい」ので、社会的に大きな混乱を招いていないのが、不幸中の幸いではある)。されどそのあいまいさ、「グレーゾーンはみんなで一緒に見てみぬフリ」なテキトーさが、個人的には「超キモい」。

「ズボン」が「パンツ」と呼ばれるようになって久しいが、これにも違和感を覚えている。下着としてのパンツが「パンツ(↑↓↑)」という発音なのに対し、かつてズボンと呼ばれていた方のパンツは「パンツ(↓↓↑)」と、最後の音を上げることで差別化を計っているようだが、分かりにくい。先日ラジオを聞いていたらステキなDJの女性が「普段はパンツルックの多い私ですが、この冬はスカートにも挑戦してみようと思っています」と語っていた。「パンツルック」。パンツ一丁で気取って歩く女を想像し、私が飲みかけの水を吹き出したのは言うまでもない。おかげで「ズボン」が濡れてしまった。しかし「パンツ」は無事だった。一体「パンツ派」の人々はこの状況を、文章でどのように表現するのだろうか?


「自分磨き」と言う言葉も好きではない。素敵な女性になるためにダイエットやオシャレや習い事に勤しむ行為を総称した言葉だが、このワードを聞くと私はいつも、小学校の保健室を思い出す。ある日、歯磨きの授業があった。「歯磨きはやさしい力で行いましょう。力を入れすぎると歯が傷ついて、歯茎から血が出てしまいます」先生はそう言うと、ボロボロになった歯の拡大写真と、血を流して腫れた歯茎の写真を掲げた。「うわぁぁぁぁぁ!!」児童たちは絶叫した。

 自分を向上させるための努力は必要だが、だからといって自分以外の人間にまでなる必要はない。己の中の大切なものは人知れず、そっと磨き続ければいいのではないか? 私は最近とみに、そう思っている。



豊村真理(とよむら まり)プロフィール

豊村真理(とよむら まり)プロフィール

1981年生まれ。
「週刊TVガイド」編集部を経てイラストレーターに。第27回読売広告大賞優秀賞受賞。
余命半年から生きてます!」(相河ラズ著/幻冬舎刊)挿絵を担当。雑誌「GOETHE(ゲーテ)」で映画のイラストを連載中。
ブログもだいたい毎日更新中!

豊村真理オフィシャルブログ
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