お品書き



日本の歴史を振り返るミュージカルと、男臭さ100パーセントの名作映画、そして道案内にまつわる悩みなど・・・いろいろまとめてお届けします!

 劇団四季さんのミュージカル『異国の丘』を鑑賞しました。日本の首相の息子ある九重秀隆さんという(史実に想を得た)架空の人物が、戦後11年にわたってシベリアに抑留されてしまうお話で、回想を織り交ぜて秀隆さんの短くも鮮烈な一生が描かれていました。見どころは本当に全部で、大河ドラマ1年分くらいの濃い内容なのですが、私がいちばん感激したのは、アメリカ留学時代のエピソードです。緊迫する国際情勢をふまえ、西洋人たちにパーティで「日本はどうなってるんだ!」と詰め寄られた若き秀隆さんが、堂々と国の政策を説明し、自分の意見を述べ、空気が悪くなったらちゃんと笑いも取る…ということをやってのけていて、そのポテンシャルと人間力に驚きました。(しかも並み居るアメリカ人を押しのけて、プリンストン大学ではゴルフ部キャプテンを務めているという豪傑ぶり!!)そんな素敵な方が、戦争に巻き込まれ思うように生きられなかったなんて、とても悲しいことです。下の世代を生きる者としては、日本の歴史や文化をなるべく学んで、あとジョークも、パッと言えるように。秀隆先輩目指してがんばらなくては…!! そんなことを思いました。

劇団四季 作品紹介(ステージガイド) ミュージカル異国の丘
http://www.shiki.gr.jp/applause/ikoku/

 今回も、『GOETHE』(6月24日発売号)でご紹介しきれなかった新作映画をイラストにしました。ぜひ『GOETHE』とセットでご覧ください。

 アメリカ禁酒法時代を生きる三兄弟の奮闘を描く映画。とにかく男らしい三兄弟が主人公で、「自分達は死なない!」と敵を前に大口を叩きまくり(不死身伝説)、危険な目に遭ってもホントに死なない(!)のが痛快でした。男は男らしく、女は女らしく、悪者はどこまでも悪い。キャラクターがきちんと反映されたシックなファッションにもうっとりです。私はお酒が飲めないので、酒の密造に賭ける登場人物たちの情熱は多分きちんとは理解できなかったと思うのですが、お酒が好きな方はより一層、三兄弟に共感できるのではないでしょうか!? 休日、ビール片手に勧善懲悪なこの作品を映画館で堪能したら、日ごろのストレスも一気に吹き飛びそうです。「本当の強さは立ち向かう意志だ」という最強次男・フォレストの名言もかなり心に響くザ・名作。お勧めです!

映画『欲望のバージニア』公式サイト
http://yokubou.gaga.ne.jp/

社説

Webマガジン幻冬舎: 豊村真理 蛇いちご新聞 第43回

道案内問題

道案内問題

 週3で人に道を聞かれます。
 私は元々、見知らぬ人と話をするのが苦手なので、外に出かけるときはいつもSONYのウォークマンを持参してイヤホンを装着し、音楽を聞きながら世の中をシャットアウトして歩いているのですが、この頻度。
 けっこうなものだと思うのですが、いかがでしょうか。

 先日も初めて行った街で迷わないよう注意しつつ歩いていたら、前方からアジア系の若い女性がやって来て、何語か分からない言葉で道を尋ねてきました。

 いや…この街のことは何も知らねぇ。
 アンタの言葉も聞き取れねぇ。
 そしてそれを伝える術も分からねぇ。

 まさに『分からない界』の三重苦。仕方ないので全世界共通の降参ポーズ(両手挙げてヒラヒラ)をしてなんとか納得していただきましたが、私、いつもそんなにワケ知り顔で歩いてるのかしら?

 どちらかといえば、道に迷うことも多いです。

 つい近頃も、とある会社のビルで行われる催しに向かっていたのですが、現地の駅について初めて、家でプリントアウトしてきた会社HPの地図がまったくもって使えないことに気づきました。その地図はやたらとシンプルでオシャレなデザインだったのですが、オシャレと引き換えにいろんな情報がカットされていたのです。あるべきところに道が無い。無くていいところに素敵フォント。完全にデザイナーの自己満足作品。てか、ストリートの角を丸く削ったりビルのイラストに照りとか入れてる暇があったら、「三つ目の角のローソンを右!」とかダサい情報をふんだんに盛り込んで欲しかったんですがね・・・恨んでみたところで時間も無い。仕方無いので、最寄りの交番に駆け込んだのですが、地図を見てお巡りさんも困惑しています。
「こりゃずいぶん…サッパリしてるねぇ」
 そう言うと彼はレジャーシートのように大きな地図を取り出し、熟考した挙句「あった。ここだ!」おもむろにそれを私に差し出しました。ふ、複雑ぅ…!しかしそんなコトも言ってられません。動揺を隠しつつ何とか地形を頭に入れ「ありがとうございました!」急いで交番を出ます。腕時計を見ると、もう10分無いくらい。わー。コレ無理かも。と思ったその瞬間、植え込みの影から突如、見知らぬおばさんが現れました。見ると手に、私と同じ地図を持っています。曰く、「私もそこに行きたいんだけど、道に迷っちゃったの。アナタ行き方聞いたんでしょ?一緒に連れてってよ!」うわ、めんどくせー。

 最悪、自分ひとりが道に迷って辿り着けないなら諦めもつきます。でもこの人の保護者的ポジションまで担ってしまうと、そういうわけにもいかなくなる…。よほど断りたかったのですが、生まれたてのカルガモのようにヒョコヒョコと後ろをついてくるおばさんを見てしまうと、捨て置いて逃げるのはあまりに酷だ。仕方なく、一緒に行くことに…。しかしやっぱり途中で道が分からなくなりました。でもひとりじゃないから、引き下がるわけにもいかない!
 番地を照合しながらシラミつぶしにそれらしき建物を探す私。おばさんもモチロン協力してくれてる・・・よ、ね?とチラ見すると『人さし指で前髪くるくる+アクビ』とかしてんじゃねーよ、コラ!!

 しかし冷静さを失っては元も子もありません。煮えたぎる気持ちをグッと抑えて必死で街路を行きつ戻りつしていたところ、ようやく目的地を発見。
 やった!間に合った!! ちょっと奥まってたから分かりにくかったんですね…と、一応の笑顔を作っておばさんを振り返ったその時です。「山本さん!!」ビルの陰からひょっこり、アナザおばさんが登場。どうやらお友達のようです。駆け寄って、手を取り合う二人。「ヤダ〜遅かったじゃない」「そうなのよ。道に迷っちゃってさ・・・チッ(舌打ち)」「大変だったわねぇ。さ、行きましょ」「行こ行こ!」…別にいいんです。こっちも一刻も早く、アンタから解放されたいって思ってましたから。でも、山本よ…ここは一応、「ありがとう」じゃね?

 その時、初夏の蒸し暑い風がモワリと私を包み、こんな考えが頭をよぎりました。(長年連れ添った妻からいきなり熟年離婚を突きつけられた夫の気持ちって、こういう感じなのかも…)。

 帰り道。私が家電量販店に立ち寄って、ウォークマンに接続できる大型のヘッドフォンを買い求めたことは言うまでもありません。こんだけゴツいの被ってれば、きっともう誰からも道を尋ねられることはないだろう…。そうであって、欲しい。



豊村真理(とよむら まり)プロフィール

豊村真理(とよむら まり)プロフィール

1981年生まれ。
「週刊TVガイド」編集部を経てイラストレーターに。第27回読売広告大賞優秀賞受賞。
余命半年から生きてます!」(相河ラズ著/幻冬舎刊)挿絵を担当。雑誌「GOETHE(ゲーテ)」で映画のイラストを連載中。
ブログもだいたい毎日更新中!

豊村真理オフィシャルブログ
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