みそずい〜ミソジのつぶやきレター
大久保佳代子さま

 前略 大久保さんが食事日記を書くと聞いたので、私も書くことにしました。私の1週間をご堪能あれ。


1月15日

昼 サンドイッチ、コーヒー
夜 おでん、ヤムウンセン(タイ風はるさめサラダ)、中国風手羽の煮付け

 仕事が早く終わり、いつものごとく、当たり前のごとく、友人(少女的おっさん)の家に行く。最近の私は、半同棲と言って良い程、彼女(男)の家に入り浸っている。私が行くと、彼女は「おかえり」と言ってくれるようになった。タクシーで彼女の家に向かう途中、KABA.ちゃんを拾い、2人で「ただいま」。
 近くのスーパーに私と家主が買い出しに行く。KABA.ちゃんは留守番。以前、そのスーパーで、KABA.ちゃんが修学旅行生に見つかり、面倒なことになったからだ。

 ……1ヶ月ほど前のこと。その日いつものように、KABA.ちゃん、私、オカマちゃんの3人は、オネエ言葉で「こっちのほうが安いわよ」などとスーパーで大はしゃぎをしていた。そこに、数人の女学生が恐る恐る近づいてきた。「KABA.ちゃんですよね?」と。「そうですけど」とKABA.ちゃんが答えると、「きゃー!! マジで? マジで? 写真取って下さい!」とその場で撮影会が始まってしまった。
 その時、私は気付かれていなかった。女学生の目に私は全く映ってなかった。自分から「私もタレントです」と名乗るのも体裁悪いし、正直、面倒くさいで、私はするぅーっとその場を逃げた。卵売り場の影からこっそり見ていたら、どこに隠れていたのか、KABA.ちゃんの周りには田舎の中学生らしき制服集団がわらわらと集まってきた。中には携帯で仲間を呼び出す者もいた。
「オレもツーショットで」「あたしもツーで」人垣はどんどん膨れ上がっていき、手に負えない人数になってしまった。集団旅行者が一番強気だ。集団心理と旅の恥は掻き捨て。鬼に金棒だ。こりゃ大変だ。見つかっていないとはいえ、用心には用心をと、メガネをはずし(変装)卵の陰に隠れていたら、スーパーの親父に声をかけられた。
「KABA.ちゃんは人気あるねえ。光浦さんとこは来ないねえ」
 ん? どういう意味ですの? 少々のプライドが
「いやあ、メガネはずすと気付かれないんですよ」
 と言わせた。すると親父は
「オレはすぐ分かったよ。メガネなくても、そのアゴ見りぁあ分かるわな」
 と言い去って行った。
 …………ん? またまた、どういう意味ですの?

 今日は、まったく、誰からも注目されることなく買い物は終了した。
 家に帰り、家主が手羽を煮て、私がヤムウンセンを作り、二人でおでんを作った。出来上がる頃、いつものオネエおっさん2人が来て、5人で食事。大好評。心は女といえども、体は男。すごい勢いだった。
 その後、恋の話になる。経験のなさと、ジャンルの違いから、これといった発言もできず、満腹感でウトウトしてしまう。


1月16日

昼 とんかつ弁当
夜 カレー、かぶの酢の物、
深夜 梅酒3杯、ゼリー、おかし、ぎんなん

 また、いつもの友達の家でごちそうに。上げ膳据え膳。これが男か? という気遣い。嫁に欲しい。
 夜、そんな仲間4人でカラオケに行った。80年代アイドルソング大会だった。「職場じゃバレてないの」という彼らの歌声は、あまりに高かった。「飲み会で歌ったりするの?」と聞くと、「もちろん」と答えた。「調子いい時は踊っちゃう」とも。彼女たちを職場の皆さんはそっとしてあげてるのね、と思った。いい職場じゃん。


1月17日

夜 餃子、いかゲソと昆布のポン酢和え、かぶの酢の物、お吸い物
深夜 ケーキ
 起きたら日が暮れていた。昨日、深夜の3時頃からカラオケに行き、朝までアイドルソングを歌い続けていたからだ。昨日「明日休みなんでしょ? どうせ引きこもるんでしょ? これ持っていきな」と持たされた餃子とかぶの酢の物に助けられた。久々に家で一人で食べたら、喋らないということは、こんなにも咀嚼に集中できるのか、と気付いた。噛む、噛む、噛む。調子こいて、おかわりしまくったら下痢をした。


1月18日

昼 パン、チーズ、生ハム、トマト
夜 アジのひらき、フキの煮物、サラダ、お吸い物、ごはん

 原稿書きの一日。締め切りが明日なので、イヤでも書かねばならん。テレビブロスの「傷なめ倶楽部」。読者からのお悩みに答えるものだ。今回の悩みは「陰毛に1本、長いモノがあります。愛着もあるし、宝毛かもしれないし、抜いたほうがいいんでしょうか? 女性から見て、どうでしょう?」というもの。……ふー、毎回、大変頭を悩ます。しかしギャラはとても安い。事務所が半分ちかく、いや、それ以上持っていってるのでは? 事務所に抗議せねば。しかし、日本語が通じない社長に、何と言おう? あのマンゴー事件以来、社長には会っていない。マンゴー事件とは……。
 以前、奄美の知り合いが事務所にマンゴーを送ってくれたことがあった。もちろん私宛にだ。しかし、事務所の人間は、私に断りもなく、勝手に食べてしまったのだ。それを知ったのは随分経ってからだった。食べたことをグチグチ言ってるのではない、私宛に荷物が来たことをなぜ連絡しないのだ、とムカついた。世話になってる人なのに、好意で送ってくれたのに、私は礼の一つも言えなかったのだ。
 怒り心頭で事務所に電話をすると「いや、社長に言われたんで……」と名前もしらない新人マネージャーが答えた。何をぬかしとんじゃ!? 「じゃあ社長を出せ!」と怒鳴り、社長に怒った。すると、社長は私に謝るかと思いきや、キレ返しをしてきたのだった。「ガタガタ言うんじゃねえ! 事務所に勝手に荷物送らせんじゃねえ! そんなことオレが知るか!」と。私は間違っているのだろうか? 人の荷物を勝手に開け、食していいのだろうか? 「いや、人としておかしいでしょ?」「うるせえ!! 黙れ!! ああ?」
 私は言葉が全く通じないことに悲しくなった。人間は言葉を手に入れたから文化を築けたのに。言葉が人間である証なのに。怒鳴りは言葉ではない。私は涙がポロポロでてしまった。34歳、号泣をした。
 電話口で泣く私に、社長は少し言い過ぎたと思ったのか、少々落ち着いた口調になった。そして、どんなモノを送ってくれたのか分からないから、とりあえず捨てていなかった箱だけでも私の家に届ける、ということになった。「あのさ、マンゴーじゃないけど、事務所にキウイがあるから、それも持っていかせるか?」社長がいつもの東北訛りで言った。私は涙声で答えた。
「わらしが食べたかったのはぁ、ひっく、マンゴーれす!」
 ……これが世に言うマンゴー事件だ。誰に言っても真面目に聞いてくれないマンゴー事件を思い出し、また悲しくなった。ギャラの話はまた今度でいいや。イヤなことを思い出し、胃が痛くなった。気分転換にスーパーに行く。久々に自炊した。……案の定、下痢をした。


1月19日

昼 コンビニのおにぎり、スパゲティー
晩 お弁当
夜 カシスオレンジ、ジャーキー、サラダ、その他
深夜 とろろご飯

 仕事づくめの1日。パトロールシスターズのレコーディングの後、テレビ収録、そしてテレビ収録。全てが終わり、ちょうど帰る頃、森三中から電話があり、黒沢と村上と3人で飲みに行く。大島は来ない。だって、なんやいっても、主婦だもの。
「だいたひかる結婚」、必然的にその話になった。が、うらやましいとも、悔しいとも思わない。なんだか疲れてしまって、他人の出来事に心が動こうともしないのだ。そんなことより、今日のトーク番組がうまくいかなかったことで頭は一杯だった。
「そんな毎日、毎日面白いこと起きるわけねーだろ。ネタぎれだよ」
 はー、面白いって何? また途方に暮れる。
 これといった話もなく、近況報告と、いつもの褒め合いをした。女芸人は傷をなめあい生きてゆくのだ。
「光浦さん大丈夫、モテますよ」
「そんなこと言う村上だって可愛いって評判だよ」
「黒沢は基本が美人だからいいよね」

 明け方4時頃、家に着く。なんだか小腹が空いてしまい、とろろご飯を食べた。暗い台所で一人、山芋をすった。


1月20日

昼 ごはん、フキの煮物、お味噌汁
夜 お弁当
深夜 おにぎり、おかし

 雑誌の対談で、あこがれの人に会う。糸井重里さんと『海馬』という本を出した、池谷祐二さんという脳の研究をしている学者さんだ。
 以前『海馬』を読んだのだが、とても面白く、友人に勧めまくっていたぐらいだったので、対談の話がきた時、即答した。聞きたいことが一杯あった。先生は、私の1コ上だとは思えない可愛らしいルックスで、話は興味深いモノばかりで、本当に楽しかった。どうしたら頭が良くなるか? とか、目に見えていると思う世界は実は脳が見せていた、とか、脳のある部分を刺激すると「神様にあった」などという宗教的体験をする……とか。対談が終わってもまだまだ話足らず、みんなでお弁当を食べながら雑談した。「へええ」の連続だった。
 雑誌の対談がきっかけで結婚って、よくあるパターンじゃない? 以前母が言っていたことを思い出した。「やっちゃんの旦那さんになる人はきっと頭のいい人だよ。だって、やっちゃんの良さを理解するのはちょっと難しいもんね」褒めてるのか、けなしてるのか良く分からん言葉だった。
 先生の左手をチラリと見た。うわぁぁーー、薬指に指輪があった。

 ただいま傷心中のKABA.ちゃんを呼び出し「またフラれたわよぉ」とラジオまでの1時間お茶をした。「お互いフラれ者同士、強く行きましょうね」と慰めあった。が、KABA.ちゃんとは、傷の深さが違うか。ラジオ収録にむかう。


1月21日

朝 ライスバーガー
昼 お弁当
夜 ごはん、残りもの野菜鍋

 朝一で大阪へ。東京が雪で新幹線が怪しい?ので、早めに来い、とのことで。不眠不休だったので(ま、新幹線で寝たのだが)頭がぼーっとした1日だった。昼に弁当を食べたが、内容をまったく覚えていない、目を覚ますためだけの食事だった。
 昨日の睡眠時間を取り返すかのように、家に着くとすぐ、12時間寝た。そして深夜、一人鍋をした。冷蔵庫の残り物で一人鍋。うまいわけない。


 いかがでしたでしょう? 私の食事日記。不規則極まりない生活。
 休みが多いのでまだ良い1週間でしたが、仕事三昧の時はキツいです。毎食、お弁当になりますからね。金は貯まるが、健康は浪費する、どっちも手に入る生活ってないのですかねえ? CMだけで食っていける、そんな女優に憧れます。
 大久保さんの日記を読みました。私は、謝らねばいけません。以前、「大久保さんは人前では少食のフリをする」と書きましたが、本当に少食だったんですね。ごめんなさい。体、大丈夫ですか? それしか食べていないなんて。……でも、どうしたら、その体型を維持できるんでしょう? あ、嫌味じゃなくて、純粋な疑問です。
 私は歳のせいなのか、この不規則な生活に体がついてゆかず、暇さえあれば寝ている、14、5時間ならノンストップで寝ていられる、という堕落っぷりです。

 大久保さんは暇な時間、何をして過ごしていますか?
 大久保さんって趣味ありましたっけ?
草々 光浦靖子