ヤシキケンジ サムライブルー 酔いどれ観戦記

 私は「サッカー」の熱心なファンではない。Jリーグも見なければ、海外のクラブチームの試合だって、しょっちゅう見ない。スカパーも入ってない。しかし、「日本代表」の試合だけは欠かさず見る。民放で見れるから。というのも理由のひとつかも知れない。にわかサッカーファンというより代表ファン(ミーハー)。代表に招集される選手しか知らない。知らない選手を沢山覚えていくよりも、代表選手だけをより知っていきたい。それが私(代表ファン)のサッカーの見方だ。

 はじめて日本代表の試合を会場観戦しに行ったときに、驚かされたことがある。
 テレビで見ていると、ゴール裏で旗を振りまわして熱狂的に応援しているサポーターが映されることが多く、サッカー場はすごい熱気なんだと思わされた。自分が会場に行っても、あそこまで熱心に応援は出来ないなあと怯んでいた。というのも、時折、選手の似顔絵を描いた大きな旗が客席に広がり、旗の下にいる人は、まったく試合が見れない状態になったり、先頭に立ってる人などは、自らピッチに背を向ける恰好で試合を見ないで応援を煽っている。サポーターも熱が高じると、試合を見なくていいのかと感心していた。しかし、いざ会場に行ってみると、あの熱狂的なサポーターたちはゴール裏の一部だけで、その他大勢の客席は、ごくフツ―に盛り上がっている観客がほとんであった。その光景を見て、なんだ普通に見ていいんだ、と胸をなでおろした。試合会場に行って試合を見れない位なら、家のTVで見てた方がマシである。
 ついでにいうと、スポーツバーで観戦というのも、私は好きではない。
 2002年日韓W杯の時、日本がチュニジアに2-0で勝った日の夜。
 私は六本木のスポーツバーのような所に出向き、ビールを飲んでいた。店内には代表ユニフォームを着た大勢の男女が勝利を祝している。そんな姿を店の端で眺めていると、一人のユニフォーム姿の女の子が声をかけてきた。明らかに泥酔している様子の彼女は「今日の日本代表、どう思 う?」と聞いてきた。森島が決めた1点目がすごかったよね、と返すや否や、「アンタは森島の凄さを全然分かってないっ!!」と怒鳴りつけられ、思い切り平手打ちを喰らわされた。一体なにが起きたのかと茫然とし、だんだんムカついてきた私は「何すんだよ! じゃあ森島がどうスゴイんだよ?」と怒り口調で聞くと、オンナは涙目になり、ごめんね、やっぱり森島はスゴイよ、と言いながら何故かキスをしてきた。まったくもってワケが分からなかった。どんなプレイなんだこれはと混乱していると、オンナの連れらしき男2人がやってきた。どうやらオンナを探していたようで「コイツ、なにか迷惑かけませんでしたか?」と低姿勢で謝ってくる。叩かれたあとにキスされました、もうちょっとしてたかったです……などとは言えず、歯切れ悪くなにもなかったと答えた。オンナは泣きベソをかきながら連れの男たちと店を出て行った、というよく分からない思い出がある。いまだにあのオンナは何だったのかよく分からないが、スポーツバーに行くと、ビンタされてキスされてしまう、よく分からない所だから「怖い」というトラウマがある。

 それはさておき、6月3日からサッカーワールドカップ・ブラジル大会アジア最終予選がはじまろうとしている。
 語り草となっている「ドーハの悲劇」以降、日本は4大会連続でW杯出場を果たしている。
 ぶっちゃけた話、今回もまあ、なんだかんだ言いながら結局は本大会に出れるんでしょ?と思っている。私が楽観的にそう言うと、必ずといっていいほど、サッカー通の方から最終予選はそんなに甘くないとお叱りを受ける。私は「当事者でもないアンタになんでそんな事が言えるのか」と心の中で反論する。口に出すと長々とその説明をされてしまいそうだし、揉めてしまいそうだし、ムキになられても困る。ピッチ外でそんな不毛な揉め事は避けたい。
 しかし当事者である選手たちも、コメントを求められれば、簡単な試合は一つもないと言う。確かにそうなのかも知れないが、誰か一人くらいは内心で「楽勝楽勝。だってオーストラリア以外は弱いんだよねー」と思っていて欲しい。「向こう30年は日本とやりたくないと思わせるくらいの…」など、本田選手あたりなら言ってもいいんじゃないかと思っている。前回の南アフリカ大会で優勝したいと言ってた位だから、予選ではそれくらいの事を言って欲しい。前回でビッグマウスには懲りてしまったのだろうか?
 謙虚なことが美徳とされるこの国においては、ビッグマウスが必要以上に大きく取り上げられてしまう。だが、スポーツ選手の普通の謙虚な言葉なんて別に聞きたくないのである。「おうワイや。ワイが点数決めて試合を勝たせたるで〜。ゴールネット突き破る位のシュート打ちこんだる! オージーもヨルダンもジーコもおまーんも全部イテまうぞ!」くらいの威勢の良さが欲しいところだ。そのくらいの方が頼もしい。別に清原口調じゃなくてもいいし、野球ネタが多くて申し訳ない。

 前回の南アフリカ本大会前、岡田監督率いる日本代表は、テストマッチで負け続けたまま本大会へ向かって行った。誰もが本大会での惨敗を予想していたにも関わらず、準優勝国オランダに次ぐ2位突破で決勝トーナメントに駒を進めた。掲げていたベスト4には及ばなかったが、サッカーとは下馬評通りにはいかない、なにが起こるか分からないスポーツだということを改めて教えられた気がする。
 視聴率も高く(カメルーン戦45.5%)惨敗を予想していた人たちも、匙を投げながらもちゃっかりTV観戦はしていたわけである。観戦していた日本国民は「負けるかな、負けるよね? けど、もしかしたら……いや、やっぱり負けるよね?」なんてマゾヒスティックな気持ちでカメルーン戦を観ていたはずである。勝った翌日以降、マスコミを含めた反応を見ていると、これが手の平を返すということかとまざまざと見せつけられた。予選まで100mを12秒台で走ってた人が、本番になるといきなり9秒台で走るなんて、誰も予想でないようなモンである。
 勝っては盛り上がり、負けても「次は負けられない戦いが」とさらに盛り上がる。どっちに転んでも盛り上がること間違いなしのW杯最終予選。当事者の選手、スタッフ、スポンサー関係は大変気を揉むのは当然だが、応援するこちら側はビール片手に「あー、うー、ザックがよぉ」などと無責任に応援していれば良いだけである。勝てば祝杯、負ければヤケ酒で良いのである。

 そして、なんといってもピッチ外の見どころといえば、TV解説の松木安太郎とセルジオ越後の迷実況にも注目していきたい。松木は勝ってる試合では、相手選手を小馬鹿にしたような軽口も出るが劣勢の試合になると、「ファールファール!今のファールでしょ!!ちょっと審判!!」と審判の非をまくしたて、日本選手がPA内で倒されれば「PKだろPK!!」と半狂乱、シュートが立て続けにポストに嫌われると「3回ポストに当たれば1点という風にして欲しいなぁ!」などの迷解説は、もはやルールを知らない酔っ払いのオヤジが居酒屋でクダ巻いているレベルである。キーパー川島のナイスセーブの場面で「ナイス!川越!(カワゴエ)」と完全に名前も間違えていたこともある。ちなみに私の中でセルジオ越後のベスト解説は、アジアカップ決勝でのオーストラリア戦で、岡崎選手がヘディングでシュートを外した直後の「オオー!得意、岡崎、ナカダシですけどネー」である。言わんとしてることはなんとなく分かるが、何を言いだすか。茶の間で家族集まって見ている人たちは、思わず赤面の解説である。
 だがそれが面白い。専門的な解説は時折、ピッチ横の名波が真っ当で専門的な解説をしてくれるのがありがたい気すらしてくる。その三羽ガラスに加え、熱さもウザさも失笑も越えていくパワープレーを見せるスタジオ解説の川平慈英の"解説黄金カルテット"も盛り上げてくれること間違いなし!

 見ているだけのこちら側は、応援もしくは野次るだけの勝手なポジションなわけで、これから行われるおよそ一年間に及ぶ最終予選(計8戦)の中で、どんなドラマが起こるのか、どんな結末が待っているのかをビール片手に楽しんでいければと思うのである。

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ヤシキケンジ

ライター。1979年生まれ。構成・アニメ・ドラマ・雑誌・ラジオ等で時々、仕事。10代の頃はジャニーズjr.の中に人知れず紛れ込んでおりました。今はポンコツ。

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