ヤシキケンジ サムライブルー 酔いどれ観戦記

 この連載のタイトル名が酔いどれ観戦記なので、愚直な私は試合が始まる前に近所のスーパーに行き、ビール6缶パックにウォッカと氷を買い求めた。夕暮れ時の帰り道、犬の散歩をしいていたおじさん(なでしこの鮫島さん好きそう)が日本代表のユニホームを着ているのを見て、いよいよ最終予選が始まるんだという実感がフツフツと湧いてきた。

 最終予選の第1戦ということもあってか、堅さが目立つ気がした。試合序盤からパス交換も少なかった。緊張していたのかも知れない。松木とセルジオ越後の2人である。まあ初戦なのでそれも仕方がないかも知れない。セルジオは危険なスル―パスを松木には出さず、名波への無難なバックパスが目立っていたし、パスをもらえない松木がワンマンプレーに走る場面が多く見られた。
 彼らのパスが繋がって機能しはじめたときの力はあんなモノじゃないはずだ! と断言したい。世界を驚かすんじゃなかったのか?
 3得点、無失点の快勝、それに勝点3はもちろん嬉しいが、解説組には少し物足りなさを感じてしまう内容であった。彼らが本領(迷解説及び熱すぎる解説)を発揮するのは、やはりアジアカップの試合などで見受けられたような白熱した接戦試合である。そういう試合では如何なくそのポテンシャルを引き出してくれるハズ。なので、今回のオマーン戦のような盤石の危険な局面もないゲームだと、彼らは力を引き出せない。
 今までの日本代表チームも強豪国と対戦してはなかなかの試合をするし、それより劣るであろうアジア諸国ともこれまた接戦の見応えのある試合をするというのが常であった。日本代表チームというのは、相手の力次第で上がったり下がったりする感じがしていた。
 しかし今回の試合はホームということもあってか、圧倒的な力の差を見せつけていたと思う。
 そんな試合内容とは裏腹に、あまりにキレのない解説ぶりにやきもきしながら試合を見ていたら、後半開始直後、香川と本田がパス交換をしながらゴール前に迫っていくシーンがあった。興奮した実況アナウンサーが「香川! 本田圭祐! 香川本田……香川圭祐!!」とテンパって名前をごっちゃにしてたのは、この先の長い最終予選になにか新しい可能性というか、突っ込みどころを感じさせてくれるナイスプレーだった。
 後半になって松木&セルジオコンビもいくつか良い連携は見かけたが、まだ意思の疎通は計れてない様子で、もっとゴールに向かうワンツーなどが欲しかったところだ。2人にはこれからどんどんコンディションを上げてもらって、怪気炎を上げてもらいたい。最終予選はまだ始まったばかりだ。長い目で見守っていきたいと思う。
 あと、サイドバックの内田選手と交代で入ってきた酒井宏樹選手。彼が頭をポリポリと掻く姿を見て前々から思っていたけど、動物的というか、ジャングルのなかが似合うというか、そういう顔なのだなと。いや、決して悪い意味で言ってるわけではない。内田選手のようなイケメン顔から野性味溢れる顔立ちの酒井選手に交代することで、対峙する相手に威嚇する意味合いも生まれるのではないかと思うがいかがだろうか。ついでに顔関連でいうと、得点も挙げ、巧みなポジショニングで試合の影の功労者でもあるFWの前田選手。彼の憂いたっぷりの哀愁感漂う表情はFWというポジションのイケイケ感が微塵もなくインタビューを受ける口調も朴訥としててそれがいい。無口で悲しげな異邦人の役とかやらせたらハマりそうである。目だけで哀しさを表現できる役も出来そうだ。東南アジアの山奥の貧しい村で自分を押し殺しながら家族の為に身を粉にして一生懸命働くランニングに短パン姿の前田青年。旅人からサッカーボールを貰ったのをきっかけにサッカーの魅力に目覚めはじめる。普段哀しげな表情を浮かべている前田青年がボールに触れているときは、はにかんだように笑っている。どんどんサッカーが好きになり、天賦の才もみせはじめる。そんな姿を見る家族は、前田にプロを目指せという。私たちのことはいいからと。葛藤する前田……なんていう妄想までこちら側に与えてくれる顔だ。気になって前田遼一でググってみたら、小学6年生までL.Aに住んでいたそうで、なるほどと納得。東南アジア云々言って失礼しました。


 与太話はさておき、オマーン戦の日本代表はかなりコンディションが良かったのだろうと素人の私が見ても分かるほどキレていた(遠藤選手はまだ本調子ではない様子)。本田選手がおまーんの股を華麗にブチ抜くというなんとも男前な1点目を決め、長友選手は持ち前のスタミナで90分間激しいピストン運動を繰り返していて、攻守にわたり良質な場面を見せてくれた。得点後には間延びするような時間帯もあったりしたが、オマーン相手だったら充分だと思う内容。
 日本代表は3点もぎとり相手のシュートも1本? で、まったくといっていいほど危なげない試合だったが、それは相手がオマーンだったからだ。
 試合前のザッケローニ監督や選手のコメントを見て思っていたが、用心すぎるくらいに用心してこの初戦に臨んでいた感があり、終わってみれば至極当然の結果に思えてしまう。大学生チーム相手にJ1のクラブが万全の準備をして試合に臨んだようなモノ、といえばオマーンに失礼か。オマーンの人ごめん。と、素人の私がこんな調子に乗ったようなことを言ってしまうくらいの完勝だった。3次予選の北朝鮮・ウズベキスタンの2連敗がチームを引き締める方向に向かって良かったのだろう。
 オマーンの監督ルグエンは、2010W杯のカメルーン代表の監督だった人で、またしても日本に苦汁を舐めさせられる形になってしまった。彼は、「ニッポンには勝てないヨ、こんどはニッポンの監督やりたいヨ、ハブシはガンバッタヨ」と思わずにはいられないであろう。そういう過去の戦績との比較や因果関係もサッカーといわず、スポーツの面白さだなあと改めて思う。
 とはいえ、まだ1戦終わっただけ。次のヨルダンはアジアカップでも勝てなかった相手だし(1-1のドロー)、その次はアウェーのオーストラリア。
 両国ともアジアカップで対戦済みなので、相手は日本の情報をたくさん持っているだろうし、もうすでにザッケローニは丸裸にされていてもおかしくはない。
 そんな力の差が均衡するかも知れない相手にも、あの妙にダサいユニホームもだんだん見慣れてきたように、日本がアジア相手には勝つのも当たり前だと思えるようになっていって欲しいと思うのである。そうなってこそ酒も美味く飲めるというもの。
 がしかし、余裕たっぷりで本大会に行かれてしまっては、面白味に欠けることも事実。勝って欲しいんだけど、ハラハラもさせて欲しいし、松木&セルジオはもっと面白いこと言って欲しいと願うのは贅沢な願いなのでしょうか?
 次のヨルダン戦は6月8日(金)。場所は同じく埼スタのホーム。その後は中3日でアウェーの宿敵オーストラリア戦! 代表ファンの私にとっては楽しくて仕方がない過密日程。
 昨年のアジアカップから日本はどれだけ強くなれたのか、はたまたヨルダンが力をつけてきているのか、今回の第1戦よりも見応えがある試合になること必至である。
 次も美味くお酒が飲めることを期待しつつ、ガンバレニッポン代表!! 楽しませてくれ松木&セルジオ!

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ヤシキケンジ

ライター。1979年生まれ。構成・アニメ・ドラマ・雑誌・ラジオ等で時々、仕事。10代の頃はジャニーズjr.の中に人知れず紛れ込んでおりました。今はポンコツ。

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