ヤシキケンジ サムライブルー 酔いどれ観戦記

 最終予選のオマーン戦ヨルダン戦前。
 私は常にビールや缶チューハイ、ウォッカなどを机に陳列しテレビのチャンネルを合わせ、オマーンやヨルダンがいかに怖いか・強いか・日本と因縁めいているのかと煽る川平慈英のテンションをつまみに酒を飲みながら、こちらも負けじと「くぅぅー!! 」と唸っていた。
 しかし、蓋を開けてみるとオマーンもヨルダンも「くぅー!! 弱い! 弱すぎ!!」と思わされてしまう結果が続いたあとのこの3戦目。
 最終予選の2試合で9得点無失点の勝ち点6。そんな強すぎる日本代表には照れてしまうと前回書いたが、今回のオーストラリア戦を観て、これこそ照れずに素直に応援できる日本代表のような気がした。苦戦接戦上等の我らが日本代表である。


 試合は後半に、内田の不可解なファールからオーストラリアにPKを決められたとき、実況アナウンサーは「これがW杯アジア最終予選の厳しさなのか」と声を荒げていた。
 不可解な判定が最終予選の厳しさだというのは、なんだか納得がいかない。
 不可解な判定を「中東の笛」なんていう呼び方もするが、納得がいかない判定も往々にしてあるというのが最終予選の「厳しさ」というならば、私はこの最終予選に厳しさよりも「不思議」さを感じずにはいられない。日本のグループBは3戦が終わった現時点で、日本以外の4ヵ国が一つも勝ち星をあげていないのが一番不思議だ。引き分けか負けの国ばっかり。挙句、オーストラリアの選手もイラクの監督であるジーコも「日本と一緒にW杯本大会へ行きたい」などとコメントしている。リップサービスと言われればそれまでだが、果たしてそんなサービスは最終予選に必要あるのだろうか? もしかして、みんな日本の味方なのかと勘繰ってしまう。


 今回のオーストラリア戦では、久しぶりにベンチ前で険しい顔で下あごを突き出すザッケローニを見た。あれは日本が劣勢になっているときによく見る顔だ。足元の悪いアウェーのピッチコンディション、ホームよりも少ないサポーター、景気よくカードの大判振る舞いの面妖な笛を吹きまくる審判。試合後に長谷部選手が指摘した通り、審判は完全に雰囲気に飲まれていた。あの審判は昨年のアジアカップ準決勝の日韓戦でも笛を吹いていた人のようで、思えばあのときは日本がPKを貰ったりしていたなと思いだした。特に最後のFKを蹴らせなかったのは完全に空気が読めてなかった。「いまのはイエローだけど、まあ、そういう空気じゃないし、次からは気をつけて〜」という、そんな光景はよく見かけるのもので、審判が下す判定には空気を呼むのも込みであると思う。今回の審判は、まあ空気の読めない奴だなと。
 ということを試合中に選手が気づいて積極的に活用していれば、逆にPKをもらいにいったりするという“マリーシア”つまりずる賢いプレイも選択肢として作れたかも知れない。
 トルシエジャパンの時代、フラット3と呼ばれるDFラインはオフサイドを巧みに使っていた。
 どこの国との対戦だったか忘れてしまったが、最終ラインの宮本、中沢の誰かが手を挙げれば、オフサイドでもないのに審判がオフサイドを取りまくっている試合があった。
 味をしめた日本のDF陣は相手がボールを上げるととりあえず手を挙げ、審判は反射的に必ずといっていいほどオフサイドの旗を上げるような壊れたヤツもいた。相手選手はなんで今のがオフサイドなんだとかなり激怒しており、日本のDF陣は笑いをかみ殺していたを覚えている。
 そんな風に審判の特性も味方につけるズル賢さを身につけるのも日本代表が世界で戦っていくには必要なのかも知れない。日本のお家芸であるフェアプレイ賞を目指すなら必要ないかも知れないが。
 まあそれまでもあの審判は後半の早い時間帯にオーストラリアにレッドカードを出したりしていたわけで、内田のPKや栗原の退場なども審判自身の帳尻合わせであると考えるならば、両チームとも痛み分けと見るのが妥当なのかも。


 しかし、今回はアウェーであったとしても、相手が10人になっている時間が長かったとか審判の怪しい判定があったといっても、やはり90分では勝てない相手というのがオーストラリアなんだろうと思わされた。
 アジアカップ決勝も延長までもつれ込んだし、今回も引き分けだったし。
 アジアの頂点を争うこれだけ力の拮抗したライバル国の存在というのは文句なしに楽しませてくれる。というか、オーストラリアってどう考えてもアジアじゃないじゃん! という文句は考えないようにしている。それは日本人のみならず、他のアジア諸国も同じ気持ちでいるはず。ハーフナー・マイクをどう見ても日本人には見えないというのと同じ理屈だと私は思うようにしている。日本人だと言われたら、そう思うしかないよねと。ハーフナー・マイクは事実、日本国籍を取っているから紛れもない日本人なんだけど。

 あと、今回もアシストをしてボールをキープしてタメを作っては攻撃の軸となり、ケーヒルと激しい競り合いを幾度も見せてくれた本田選手。
 この6月の3試合を通じて採点をつけるとするならば、ウイイレでも8.0以上の点数をつけると思える大車輪の活躍ぶりだった。やはり日本のエースは「ビッグクラブにふさわしいと自覚する」本田選手なのだと思い知らされた。 いやあ、キレキレのコメントだと思います。いろんな意味で。
 そんな彼がいない場合の日本代表を想定すると、ついこの前の3次予選の2連敗が思い出されてしまうではないか。
 そう、本田選手がいない日本代表は、まるで別物のチームになってしまう危険性がある。
 現在、勝ち点7で断トツのグループ首位を走る日本代表に落とし穴があるとすれば、本田選手の不在時なのであると思う。本田偏重になってきている気がしてならない。まあそれがエースたる所以なのだろうけれども。


 次戦はホームでジーコ率いるイラクとのホーム戦が控えている(9・11)。
 ジーコは日本を知りつくしていると言われるが、彼が日本を率いていたときの代表選手というのは、今はほとんどいない。パッと思いつくだけでも駒野、遠藤選手くらいか。といっても控えだったし。
 そのイラク戦では、内田・今野選手、そしてこの2試合2得点の決定力不足を解消してくれる逸材かも知れないDF栗原選手が累積警告で出場停止。DF陣にどんな人選をしてくるのか楽しみだ。


 最後に、相方セルジオを日本に残し、オーストラリアまで出向いて実況解説をしていた松木安太郎。
 放送途中で画像や音声が乱れることがあり、それを受けての発言だと思うが、ここに記しておきたい。

松木「マイクは不調でもね」
アナウンサー「はい!」
松木「(日本)チームはイイですからね!! わははは」
アナウンサー「……(つまんねー事言ってんじゃねえよクソ!)遠藤、前に出した!!」

 と、カッコ内のようなことを思ったかどうかは知らないが、完全にスル―パス状態。意味が違うけど。
 まだまだ意思の疎通が図れていないのか、アナウンサーが松木の特性を把握し切れていないのか。ナイススル―と呼ぶべきか。
 浮足立っていたのは、意味の分からないイエローカードをもらった内田選手よりも松木安太郎だったのかも知れない。
 テレ朝解説組には、もっともっと連携を深めていって絶妙な解説・名言を繰り出していって欲しいと思うのです。
 次節イラクとの戦いは、夏も終わりかけの9・11……。険呑!!

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ヤシキケンジ

ライター。1979年生まれ。構成・アニメ・ドラマ・雑誌・ラジオ等で時々、仕事。10代の頃はジャニーズjr.の中に人知れず紛れ込んでおりました。今はポンコツ。

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