突然だけれど、引越しをすることにしました。
 東京に来た十数年で、一番長く住んだ家でした。
 といっても、三年も経っていないのだけれど。
 春には桜、秋には金木犀をベランダから愛でることができ、野良猫も多い、という「毎日が嬉しくなる」ところがたくさんある部屋でした。
 でも引っ越します。
 きっかけは、お風呂場のタイルが、ある日突然はがれたこと。変な理由だけど。
 なんだかそれを見るたび悲しい気分になるので、いっそ引っ越してしまうことにしたのです。
 最近、少しがっかりするようなことが多くて、そうしたら体調もあんまり良くないし気分も優れないし、へこみがちで鬱々としているので、引越しを機にもう一度、自分に必要なものとそうでないもの、できることとできないこと、したくないこと、したいこと、そういうことを考えてみたいなあ、などと思っておるのです。
 わたしはたぶんまた、変わりたくなってきているのだろうと思います。
 まだほとんど引越し準備もできていないしダンボールに囲まれていてなんだかますます鬱々としてくるけれど、新しい生活を思えば少しは気持ちも晴れてきたりします。
 新しいお家のある街についてあんまりよく知らないので、街を歩くのも楽しみです。
 引越しは、わたしにとって旅みたいなものなのかもな、と思います。
 海外へ旅行に行くことより、引越しをすることのほうが、少し多めに好きです。
 旅行に行っても、観光地を見るより商店街を歩くほうが楽しいですし。
 東京に、またひとつわたしの「思い出の街」ができるんだなあと思うと、素直に嬉しいものです。


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