モヒートは、西印度諸島で生まれたという非常に古いカクテル。一説には、その昔、カリブ海を暴れまくったイギリスの海賊フランシス・ドレークが、このラム・ベースの酒を考え出したともいわれている。
 最近のモヒートの平均的なつくり方は、ラム酒とライム果汁と砂糖少々をシェークし、グラスに注ぐ。そこへ氷を入れ、ソーダで満たし、仕上げにミントの葉を飾る。
 誕生当時は多分、ラム酒の中にライムの果汁を絞りこみ、砂糖を混ぜ、水で割って飲んでいたのだろう。いずれにしろ、いかにもカリブ海生まれらしい爽快な風味の酒である。
 このモヒートを世界的に有名にしたのは、キューバを愛してやまなかったアメリカの文豪、かのアーネスト・ヘミングウェイ。1940年、キューバの首都ハバナに居を定めたヘミングウェイは、ハバナのほぼ真ん中、カテドラル広場にほど近い酒場ラ・ボデギータ・デル・メディオによく通ったという。そのボデギータの看板ともいうべき酒が、このモヒートだったのである。
「わがダイキリはフロリディータで、わがモヒートはボデギータで」と語ったヘミングウェイの言葉が、一躍モヒートというカクテルを有名にした。フロリディータは豪華なレストラン・バーだが、ボデギータはまるで倉庫を改造したような居酒屋風の店で、昼間から大勢の客であふれかえっている。
 このボデギータのモヒートは、シェーカーなんか使わない。カウンターの上に緑の小枝の入った大ぶりのタンブラーを10個ほど並べ、そこへ順にラムを注ぎ、次にライム果汁を加え、といった風に、何杯ものモヒートを流れ作業のようにつくり上げる。そして、つくったはしから客のもとへ運ばれていく。
 キューバ人のラテン気質というか、とにかくアバウトなのだ。丁寧にシェークしたモヒートはもちろん美味だが、暑い昼下りに飲む大雑把なモヒートも、これまた格別である。

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オキ・シローさんの著作『寂しいマティーニ』(幻冬舎文庫)から「略奪のモヒート」を紹介しています。ご覧ください。

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