にしのあきひろエンヤコラ日記〜絵本作りはつらいよ〜

 たとえば誰かの一言で芸人を始めたわけでもありませんし、何かを見返してやるといったモーレツな恨み節を炸裂させて吉本入りを決意したわけでもない僕は、小学1年の頃にお笑い芸人になりたいと思い、そのままノコノコと現在に至る平凡な人生。
 そんな人生ですから、物語になりそうな明確なターニングポイントというのはこれといってないのですが、あくまで自分の中だけで「大きく舵をきった瞬間」というのがあります。それは一つの作品との出会いでした。

 当時の僕はレギュラー番組の本数をステータスにしており(その考えも、あながち間違いではないとは思いますが)、一週間のスケジュールがレギュラー番組で埋まっては鼻を垂らしておりました。しかし、時間が経過してもその状態からステージが上がることもなく、むしろフェードアウトの気配すら漂いだします。興味のないコトにも、かなりの時間を割いていたので当然の流れですね。
「上がつまっているから…」と随分つまらない御託を並べていたのを記憶しております。
 そんな折、「舞台を観に来ないかい?」とお誘いを受けました。誘いの主は、その舞台の作・演出を手掛ける後藤ひろひと。皆から「大王」と呼ばれるヘンテコ大人です。

にしのあきひろ エンヤコラ日記〜絵本作りはつらいよ〜 #10 ド根性こんにちは Photo. A

 そこで舞台「ひーはー」を観劇。僕は批評される側に立っていたいので、ここで作品の内容に関してあれやこれやと語るようなことはいたしませんが、とかく、その圧倒的な陽の力を前に終演後もしばらく席を立てませんでした。
 そこにあったのは徹頭徹尾コメディーのウルトラハッピーエンド。価値観がひっくり返ったというよりは、パーっと霧が晴れた感じです。もう迷いはありません。陽の力で押し切る方がカッチョブーと結論いたしました。

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「ハッピーエンド」それを僕が本を書くときのルール。ダークなものを好む人が少なくないのは承知の上、次回作はもちろんのこと、これからも僕はハッピーエンドしか書きません。
「ひーはー」観劇後まもなく、マネージャーと生活保護でお馴染みの梶原にその旨を話し、そこで仕事の方向性を大きく変えました。(梶原くんゴメンね)
 後藤ひろひととの出会いは、その後の僕の人生に大きな変化をもたらし、そして今、なかなか楽しい毎日をおくらせていただいておりますので、感謝感謝でございます。

 後藤ひろひとの手は仕事だけでなく、プライベートにまで伸びてきます。後藤ひろひとと友達になったら最後、現在開催されているサッカー欧州選手権「EURO2012」の優勝を予想する「後藤ひろひと主催【伯爵杯】」に参加が義務付けられるのです。
 優勝国的中者には大王(後藤ひろひと)から「伯爵」の称号が与えられるという「後藤ひろひと主催【伯爵杯】」。その参加方法は「あなたが応援する国とわかる写真を後藤ひろひとのメールまで送ってください」です。
 大王に命じられるまま、僕は絵本のロケハンでもお世話になったイタリアを選び、イタリアンマフィアに扮し、不平を鳴らす後輩を説得し家まで来てもらい、ナルシチズム全開に何度も写真を撮らせました。

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 僕がそもそもサッカーにまったく興味がない人間だということは、この際おいといて、大切なのは遊ぶか否か。いざゆかんハッピーエンドの彼方へ。
 ひーはー!

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エンヤコラ日記〜絵本作りはつらいよ〜

にしのあきひろ

西野亮廣。1980年7月3日兵庫県生まれ。99年梶原雄太と漫才コンビ「キングコング」を結成。「NHK上方漫才コンテスト」で最優秀賞など受賞多数。現在「はねるのトびら」「キングコングのあるコトないコト」「いつも!ガリゲル」などのレギュラー番組で活躍する一方、漫才ライブ「KING KONG LIVE」やソロトークライブ「西野独演会」などの活動も意欲的に行っている。「日の出アパートの青春」「ドーナツ博士とGO!GO!ピクニック」「グッド・コマーシャル!!」(のちに、小説『グッド・コマーシャル』として刊行)、「ペンギン・ボーイズ」ほか、演劇やショートムービーの脚本・演出も。

絵本『Dr. インクの星空キネマ』では、物語の絵の力で世間を驚愕させた。絵本第二弾は、切ないラブストーリー、『Zip&Candy ロボットたちのクリスマス』。今回、三作目の絵本に取り組んでいる。

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